イルカのフジ、人工尾びれでもう一度宙へ
沖縄美ら海水族館のイルカのフジ。海洋博のあと1976年11月からいるベテランで、とても子育てが上手という雌のバンドウイルカ。
ある日突然、原因不明の病気にかかり、尾びれが腐ってゆく壊死(えし)がはじまっていった。
このままではフジが死んでしまう。
獣医師は、彼女の尾びれの切除という苦渋の決断をする。
最初の手術でも壊死は止まらない。2回目の手術でようやく壊死は治まった。
しかしその切除手術で、フジの尾びれの3/4を失ってしまうことに……。
もう、フジには小さなうちわ程度の尾びれしか残っていない。尾びれをいくら動かしても前に進まないことにフジは困惑し、ついにはまったく泳ぐ気力を失ってしまう。プールにただプカプカと浮かぶだけの日々を過ごすようになってしまった。
上下に動かすドルフィンキックで前進するはずのイルカが、身体を左右にくねらせなければ泳ぐことさえもできない。なんとかもう一度、泳ぐ気力を取り戻させたい。
サメに食いちぎられたカメのひれに、米タイヤメーカーが人工ひれを作った例がある。でも、イルカの人工ひれはどこにも前例がない。まったくゼロからのイルカ人工尾びれプロジェクトがはじることに。
ただし、
“『ひれが小さくなって可哀想だから』ではない”
“尾びれ状の『代わりのモノ』をくっつけて泳がすだけではない”
お涙ちょうだいで終わらせないことを前提条件に。
また、あくまでも彼女のほうが、人間が作った人工尾びれという異物の装着を受け入れてくれればの話だ。
イルカは異物の装着を極端に嫌う。賢い知能を持っていることのほか、泳ぎに適した身体の作りは耳たぶさえもない。ただでさえ、泳ぐ気力を失っているフジに、果たして受け入れてもらえるのか? 人工尾びれの試作ができる前から、フジの根気がいるリハビリ生活がはじまった。
また、いくつもの偶然と人々の協力にも恵まれた前代未聞のプロジェクトは失敗と改良を重ねながら、第三世代の人工尾びれがようやく使えるものになってゆく。
彼女もまた、リハビリの末、異物装着を嫌がらなくなり自ら泳ぐ勘を取り戻していった。
今日は、みんながいる大プールに、フジが久しぶりに戻ってきた。フジが感謝状をくわえ手渡す式典が行われた。もう元気にジャンプもできる。無理が無い程度の小さいジャンプだが、フジにとってはとっても大きかったことだろう。
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